刷新PIO‐NET接続できるのか
多くの自治体から「困惑」の声
「個人情報インターネットで扱えない」
消費者庁は、 2026 年 10 月からの消費生活相談デジタル化に向け、 専用回線と専用端末を廃止しインターネット回線で接続するための PIO‐NET (全国消費生活情報ネットワークシステム) の刷新を進めているが、 予算要求を求める段階になって、 多くの自治体から 「離脱するしかない」 「独自に回線を整備した場合 1000 万円を超え、 毎年相当額のセキュリティ管理費が必要になる」 など、 困惑する声が噴出している。 自治体が個人を特定する情報はインターネットでは扱わないとするセキュリティーポリシーを定めているためで、 「弱小な消費者分野の接続のために、 自治体全体のポリシーを変更するのは難しい」 という。 消費者庁が自治体の意見を聞かず実態を把握しないまま開発を進めたことが要因だ。 加えて、 自治体は新システム切り替えに伴う経常経費 (パソコンや維持費) を独自予算で確保することを求められている。 さらに、 相談員人件費への国の交付金の活用期限が 2025 年度に終わる自治体が約 220 自治体あり、 財政負担が重くのしかかる。 「毎年 10%のシーリングがかかる中で1人分約 200 万円の人件費を自主財源に置き替え、 さらにパソコンのリース費用や維持費を捻出するのは非常に困難」 など、 深刻な訴えが出ている。 離脱する自治体が出ることなく PIO‐NET を接続できるのか。 これらの経費や人件費を自主財源で措置できず接続を断念する、 相談業務をやめる、 相談員を削減する自治体が出たのでは地方消費者行政は大きく後退する。 いまだに接続のための仕様書も補助額も示されないことに憤慨する声も出ている。 消費者庁はこの危機的な状況にただ手をこまねいているだけなのか。(相川優子)
消費者庁2025年度予算概算要求
169.2億円、前年度比19.7%増
機能性表示食品 立入検査に3億円
消費者庁は8月 30 日、 2025 年度予算の概算要求額を公表した。 復興特別会計を除く一般会計は 169.2 億円 (前年度 141.3 億円) と 19.7%増。 過去最大の要求額となった前年度 (170 億円) をわずかに下回った。 死亡を含む甚大な健康被害を受け、 サプリメント形状の機能性表示食品製造工場に義務付けた GMP が順守されているか立入検査を行うための体制整備などに3億円を新規事業で盛り込んだ。 地方消費者行政を支援する 「地方消費者行政強化交付金」 は、 前年度に引き続き減額要求され 25 億円 (補助率 10 分の 10 の推進事業分 15 億円、 補助率2分の1の強化事業分 10 億円) にとどまった。 前年度は 28 億円 (同 17 億円、 11 億円) を要求し当初予算で確保できたのは 16.5 億円 (同 16 億円、 0.5 億円)。 減額要求ではさらに減ることが想定され、 補正でどこまで確保できるかが問われる。(相川優子)
全適格消費者団体26団体
国の財政措置継続求める要望書
交付金推進事業分活用期限撤廃を
全国にある全ての適格消費者団体 26 団体は8月 26 日、 地方消費者行政に対する財政措置の継続・拡充を求める要望書を岸田文雄首相らに出した。 消費者被害額は 2023 年度 8.8 兆円に上るが、 地方消費者行政への財政措置は年々減っているとして、 地方消費者行政強化交付金 (推進事業分) の活用期限措置を撤廃して、 消費生活相談員の配置や適格消費者活動支援、 消費者教育・啓発などに必要な予算措置を継続的に行うことを求めている。(相川優子)