2023年3月25日号
ジャパンライフ債権者集会終結
配当率「1.2%」
国内外6588人に6月から送金
家庭用磁気治療器の販売預託商法で経営破綻し、 山口隆祥元会長のみが詐欺罪で8年の実刑判決が確定した 「ジャパンライフ」 の 10 回目の債権者集会が3月 22 日、 東京地裁中目黒庁舎で行われ、 破産手続きがようやく終結した。 配当率は約 1.2%。 届け出た国内 6294 人、 韓国 294 人の計 6588 人の被害者に、 6月以降被害者本人名義の口座に、 配当金が振り込まれる。 認められた被害者の債権額は 1517 億円にのぼった。 破産手続き開始決定 (2018 年3月1日) から5年余。 あまりに長い。 消費税 22.3 億円が還付されたことで配当が可能になったが、 数千万円もの老後の資金のほとんどをつぎ込んだ高齢者にとっては、 あまりに少額だ。 「それでも、 ありがたい」 と感謝しつつ、 「老後の生活の不安は残ったままで、 はんてんと手袋で暖房を節約し、 夜も電気を使わないよう早く寝る生活は変わらない」 という。 節約に節約を重ねて、 亡くなった人も少なくない。(相川優子)
「ありがたいが、節約生活変わらない」
被害者の債権額1517億円
山口元会長個人の破産管財業務が終わらず、 ずれ込んでいた。 妻名義の倉庫で約 6000 万円が発見され、 山口元会長個人の破産管財人らが訴訟を提起したものの、 妻が自身の財産であると控訴したことなどで時間がかかった。 山口個人の破産手続きが終結し、 2950 万円が回収できた。
回収できた預貯金はわずか約 700 万円、 本社ビルも売却され、 約 80 店舗の支店のうち自社ビルは 17 支店で、 ほとんどが銀行や国税の抵当物件だった。 被害者が契約解除を申し出て 22.3 億円の消費税が還付されたことで、 配当が可能になった。 回収総額は 31 億円。
これに対し、 被害者より優先して支払われる元従業員の給与やボーナスなどの労働債権は 5.99 億円ある。 未払いの地方税や消費税約 1.8 億円、 破産管財人報酬 3億円、 事務費などの必要経費を引いた 18.5 億円が一般債権者に配当される。
債権を届け出た被害者数は 6588 人 (うち韓国 294 人) 債権額は約 1517 億円、 一般債権者 315 人 (うち韓国5人) 債権額約 12 億円。 合計した債権総額約 1529 億円に対し配当される。
業務継続で労働債権拡大
早期に法人格はく奪する制度を
同日会見した全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会の石戸谷豊代表は、 配当が可能となった点は評価するとしながらも、 「やはり被害者側からすれば、 被害者の被害回復よりも詐欺に加担した労働者の債権が優先されるのは納得できるものではない」 と指摘。 「業務停止を命じられながらも営業を継続し、 その間に公租公課や労働債権が積み上がって、 被害回復が非常に困難になるという根本的な原因がある」 として、 消費者庁の破産手続開始決定の申立権限を含め、 早期に行政庁が法人格をはく奪する制度を整備する必要があると訴えた。
約 6000 万円の被害に遭った山形県に住む母親 に代わって、 債権者集会に参加してきた男性 は、 「ジャパンライフの社員は、 買い物や通院の送り迎えをして、 今は亡くなった父と暮らしていた母を信用させ、 定期預金や保険まで解約させ、 老後のために蓄えた資産をほとんどつぎ込ませた。 毎日、 毎日 ATM に連れて行き 50 万円ずつ引き出させた」 と振り返る。
「うそだと分かっていて、 マイナンバーカードで預金があることが分かると、 年金が減らされると信じ込ませた。 安倍首相に関連した桜を見る会の問題ばかりが注目され、 高齢者被害の実態が置き去りにされた。 あまりに悪質な営業マンの問題をもっと取り上げてほしかった。 労働債権が優先される問題についても、 もっと理解されたのではないか」 と話している。
祖母や父と合わせて約 9000 万円の被害に遭った福島県の男性 は、 「1.2%でもありがたいが、 老後の資産のほとんどをつぎ込んだ高齢者の老後の生活の不安は消えるわけではない。 医師から入院を勧められても入院せず、 節約に節約を重ねて亡くなった高齢者も少なくない」 とこの5年を振り返った。
山の中の自宅からリアカーを引いて野菜を売って約 40 年かけて貯めた 300 万円失った宮城県の 82 歳の老夫婦は 「3万円でもありがたいが、 節約しなければ暮らしが不安。 はんてんを着て手袋をして暖房を節約し、 お風呂も3日に1回にし、 節電のために太陽とともに起きて寝る」 という。
2022年12月15日号
ジャパンライフ9回目の債権者集会
「1%超えるが2%に届かず」配当見通し
終結せず、来年5月末送金予定
ジャパンライフの9回目の債権者集会が 12 月7日、 東京地裁中目黒庁舎であった。 山口隆祥元会長個人の破産管財業務終結がずれ込んだため、 今回も終結できなかった。 3000 万円程度の回収が見込まれるため、 次回、 3月 22 日の債権者集会で破産決定を行い、 配当率は、 「1%を超えるが、 2%には届かない」 との見通しが報告された。 5月末ころに配当金が送金される見通しだが、 破産手続き開始決定 (2018 年3月1日) から配当まで、 5年以上かかることになる。 解約を阻止したり、 ノルマを達成したりした場合の奨励金について、 幹部社員への支払いは認められなかったが、 一般社員には支払われることになった。 全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会の石戸谷豊代表は 「被害者からすると納得がいくものではない」 と話している。(相川優子)
奨励金支払い不可、幹部のみ
破産開始手続から5年以上
前回、 今回で終結する見通しが示されていたが、 山口元会長の妻名義の貸倉庫から現金が見つかったことから、 慎重にさらに隠し財産がないか、 財産開示命令の申し立てを行ったことで、 山口元会長個人の破産管財業務が終結しなかった。 今後、 3000 万円程度の返金が見通され、 配当金の送金手数料なども大きな額になることから、 数か月後の返金を待ってから一括で配当する方針が選択された。
被害者よりも優先してジャパンライフの社員に支払われる労働債権のうち、 破産管財人が認められないと主張していた奨励金について、 労働者健康安全機構から債権者申し立てが行われ審理が続いていたが、 和解交渉が決着した。
地方マネージャー、 エリアマネージャー、 店長、 店長代理、 店舗責任者の奨励金部分約 700 万円については、 「違法性を認識し得た」 として支払いが認められなかった。 しかし、 一般社員の奨励金約 2300 万円は支払われる。
石戸谷弁護士は、 「被害者への配当は1%から2%という状況で、 加害者側の社員には給与を含め、 奨励金が満額支払われるのは納得がいくものではない」 と、 批判している。
今回、 山口個人の破産手続きに必要だった予納金 1600 万円が還付され、 現時点の回収額は、 前回の 22.69 億円から増え、 22.83 億円になった。 国税から消費税分 22.3 億円が返還されたことで、 配当が可能になった経緯がある。
すでに、 未払いの従業員給与やボーナス 3.77 億円、 未払いの税金 1.76 円は支払い済みで、 今後、 2.21 億円の労働債権が優先して支払われる。
届け出られた一般破産債権は、 被害者 6547 人 (うち香港 259 人) の約 1517 億円、 金融機関や取引業者など 316 事業者 (うち香港5事業者) の約12 億円の計約 1529 億円ある。
「納得いくものではない」
「消費者庁に解散命令権を」
石戸谷豊代表は 「破算管財人の尽力で、 消費税 22.3 億円が還付されたことで配当は可能になったが、 その額はあまりに少ない。 業務停止命令を出しても何度も違反を繰り返すような事業者に対しては、 迅速に被害を止め財産を保全する仕組みが必要で、 消費者庁による解散命令制度の創設が不可欠」 と訴えている。
ジャパンライフ事件を受け、 預託法を改正して、 販売から始まる販売預託商法を原則禁止とし、 違反した場合の無効を盛り込んだ。 改正預託法が本年6月に施行されても、 過去の被害は救済できない。 いまだに同様の被害を止めることすらできていない。
次回債権者集会は、 3月 22 日 (水) 11 時から、 東京地裁中目黒庁舎 103 債権者集会室 (東京都目黒区中目黒2丁目4‐1) で開かれる。
山口元会長、懲役8年確定
東京高裁 控訴を棄却
東京高裁は 11 月 18 日、 詐欺罪に問われたジャパンライフ元山口隆祥被告 (80) の控訴を棄却した。 伊藤雅人裁判長は、 「詐欺罪を認めた1審判決に誤りはない」 との判断を下した。 高裁判決に対して山口は上告せず、 東京地裁の一審判決、 懲役8年が確定した。
伊藤裁判長は、 「2010 年には債務超過で、 新規融資も受けられず、 返金申請も増加していた。 もともと持続可能性を欠き、 いずれ破綻必至のものだった」 と指摘。 「顧客をないがしろにしてでも、 会社を継続させたのは強い非難が妥当。 刑事責任も重大で、 一審の量刑に不合理なところはなく、 支持することができる」 と述べた。
ジャパンライフによる消費者被害は約 2000 億円とされているが、 この裁判では破綻直前の 2017 年7月から 12 月にかけて、 元本保証や配当金支払いを継続できないと認識しながら、 顧客延べ 23 人から計約1億 6500 万円をだまし取ったとして、 詐欺罪で懲役8年の判決が言い渡されていた。
2017年8月5日号
消費庁天下り問題
ジャパンライフへの相談
消費者庁が自主交渉に誘導
レンタルしているはずの商品がなかったなどとして1年の業務停止命令を受けているジャパンライフ社への相談について、 消費者庁取引対策課が7月 13 日付で全国の消費生活センターに対し、 まず、 相談者にジャパンライフ社への自主交渉を助言するよう求める通知を出していたことが分かった。 ジャパンライフ社は顧客に対し5月 29 日付で、 公認会計士の監査意見が 「意見不表明」 だったとする監査結果を送付しているが、 この文書についても 「非公表」 であることを強調し、 読むように伝えるよう助言するにとどめている。 契約者の平均年齢が 75 歳とほとんどが高齢者で、 家族も契約内容を十分把握しているわけではない。 事業者に直接連絡した場合、 解約を求めても契約を継続しても大丈夫だと言いくるめられる可能性がある。 解約の原資が確保されているかどうか危うい監査結果報告が出ている中で、 被害を埋もれさせる自主交渉になぜ取引対策課が誘導するのか。 あきれ果てる対応だが、 佐藤朋哉・取引対策課長は 「契約当事者が相手方に意思表示をするのは当然」 とコメントした。(相川優子)
「当事者の意思表示当然」
取引対策課長が見解
問題の通知は7月 13 日付で、 都道府県・政令指定都市、 各市町村の消費生活センター宛てに消費者庁取引対策課名で出されていた。
「返金や解約を検討されている方については、 まず、 ジャパンライフ株式会社の 『お客様相談室』 に直接問い合わせをいただくようアドバイス」 することを求め、 同社のお客様相談室の電話番号を掲載。 併せて、 「同社との契約や返金についての相談があれば、 引き続き適宜助言・あっせんいただけるようお願いします」 としている。
「とんでもない話。 自主交渉を勧めるのは問題」 「消費生活センターの役割を分かっていない」 と、 相談現場に詳しい弁護士らはこう指摘する。 「巧みな勧誘で高額契約させられた消費者は、 いともたやすく丸め込まれる。 あまりにも酷い対応」 と憤りを隠さない。
原則は当事者間交渉とはいえ、 相談者が高齢である場合や、 対象事業者が預託の現物がなく、 負債額の記載が虚偽であると違反を認定した業務停止命令中の事業者では、 考えられないという。 「返金の見通しが明らかではない会計監査結果が出ているのであれば、 消費者庁が積極的に介入し、 返金計画を見届ける、 あるいは、 法執行官庁として、 刑事告発をしてしかるべき」 などの意見が出ている。
ベテランの相談員らからも 「自主交渉はあくまで原則。 このようなケースは、 契約書を入手して契約の実態をよく検討し、 センターがあっせんに入る」 「特に破たんが懸念されるケースは、 クーリング・オフや取り消しの主張を書面通知しておくことが重要」 「相談者に応じた、 具体的処理方法を時期に合わせて情報提供すべき」 などの声が聞かれた。 センターがあっせんに入らなければ、 被害の実態は明らかにならず、 相談内容も 「問い合わせ」 や 「契約内容の確認」 にとどまる可能性もある。 被害実態が十分に把握できないことにもつながる。
ジャパ社からの会計監査報告
7月13日付で「読むよう」助言
問題の文書では、 消費者庁の命令に基づいて、 ジャパンライフ社から預託者に監査結果が通知されているとし、 「読むようお答えいただけますと幸甚」 とも記載されている。
監査結果には 「平成 27 年度の計算書類について、 適切な監査証拠を提出できず、 『意見不表明』 との監査意見であった。 つまり、 適正な計算書類であるとの意見はもらえなかった」 「平成 26 年度の計算書類について、 監査の前提条件を満たしていないため、 監査を受託してもらえなかった」 と記載されていると報告。 「上記通知内容は、 一般には非公表ですので、 お取り扱いにはご注意ください」 と、 非公表であることが強調されている。
『意見不表明』
ジャパ社の通知5月29日付
取引対策課が7月 13 日付で読むよう助言を求めたジャパンライフ社の通知は、 実は5月 29 日付で 「独立監査人による監査結果等のお知らせ」 として、 顧客に発送された。 本紙は6月初旬に入手している。 なぜ、 通知から1カ月以上も経過した段階で、 センターにこのような助言をしたのか、 まず、 対応の遅さに疑問がある。
本紙が入手した5月 29 日付の文書には、 「弊社が公認会計士に監査を依頼したところ、 公認会計士の監査意見は、 意見不表明というものでした。 つまり、 弊社の計算書類は適正であるとの意見はいただけませんでした」 とし、 「純利益が約 53 億円増加したことになっているが、 適切な監査証拠を弊社から入手できなかった」 などと記載されている。
「読んで分かるなら、
だまされない」
「読んで分かるようなら、 だまされていない」。 この問題に詳しい弁護士から、 こんな指摘も出ている。 なぜ、 この程度の内容しか、 各センターに伝えないのかも疑問がある。
日本公認会計士協会の 「分かりやすい会計・監査用語解説集」 によると、 「監査人が 『意見不表明』 の報告書を提出するのは、 財務諸表に対する意見表明ができないほど、 会計記録が不十分であったり、 監査証拠が入手困難である場合に限られる」 「この監査報告がなされると、 その決算書は 『信用できない』 ということになり、 上場会社は上場廃止基準に抵触することになる」 とある。
消費者庁取引対策課は、 7月 26 日付で 13 日の文章を補正して上記の説明は追加しているが、 あくまでまず自主交渉に誘導する点は変更されていない。
「信用できない監査内容」
消費者に分かりやすく説明を
ジャパンライフ社は、 消費者庁の命令に反し3月 31 日付で、 消費者庁が認定した違反事実と真逆の内容を記載した文書を、 顧客に送付している。 ジャパンライフ社は 「国内3工場、 海外2工場で生産し、 大量の在庫を保有している」 「創業以来 42 年間、 決済報告書で問題を指摘されたことはない」 などと主張していた。
さらに5月 13 日付では、 3月には初の月間売上 30 億円を達成したという文書も送付されている。 2月の売上は 29 億 2122 万円、 3月は 30 億 558 万円、 4月には 35 億 5849 万円の実績が上がったとしている。
高額な契約を続けている顧客は、 どの文章を信じていいのか分からない。
まずは、 顧客に5月 29 日付で発送された文書の 『意見不表明』 が 「上場企業であれば、 上場を廃止されるほど信用できない会計監査内容であること」 を、 分かりやすく消費者に伝えることが求められる。
消費者庁は、 2回目の行政処分で負債額の虚偽記載を認定しながら、 ジャパ社に会計監査を受けて報告することを命令した。 消費者庁自らが粉飾決済で違反認定をしていればこのようなことは起きていない。
情報開示請求にも
2カ月でゼロ回答
平成 27 年度分の意見不表明や、 平成 26 年度分は監査を受託してもらえなかったという報告では、 どのような粉飾決済があったのかは分からない。
業務停止命令を出した消費者庁が、 何が問題なのか分かりやすく説明し、 悪質性を伝える必要があるが、 消費者に最も必要な情報を問う質問に、 消費者庁は一切回答しない。
レンタルユーザーの数、 レンタルオーナーの数が見合っているのか。 新たな被害でレンタルオーナーへの支払いをしている自転車操業ではないのか。 極めて脆弱な経営状態ではないのか。 虚偽記載を認定した負債額約 288 億円がどのくらいの大きさでどのような意味を持つのか。
本紙はこれらを明らかにすべく、 4月 25 日付で消費者庁に情報開示請求を行ったが、 請求から2カ月後に開示された2つの文章からは、 何一つ新たに明らかになる内容はなかった。 8カ月をかけ 12 月 25 日までに順次開示するとしているが、 消費者・生活者の視点に立つ行政へと、 パラダイム(価値規範)の転換を図るために創設された消費者庁にふさわしい情報開示を求める。
業務提供誘引でさらに勧誘
自主交渉に誘導している場合なのか
全国の消費生活センターなどに寄せられる同社への相談件数は、 2016 年度は 169 件、 2017 年度は 93 件 (PIO‐NET、 7月末日登録分)。 契約者の平均年齢は 2016 年度は 75.2歳、 2017 年度は 76.1歳と、 ほとんどが高齢者だ。 相談者の平均契約金額は、 2016 年度は 2250 万円、 2017 年度は 2714 万円と高額で、 最高契約額は5億円。 取材で2億円を超える契約者が 24 人いることも判明している。
ジャパンライフ社は 「レンタル料」 を 「月額活動費」 に変更。 預託取引ではなく、 業務提供誘引取引として、 これまで行われていたと同様の契約を続けている。 すでに、 国際大会と称し、 業務停止命令中に、 業務停止命令を受けた訪販による勧誘を行っていたことも報道してきた。
消費者庁は、 同社への相談を自主交渉に誘導するよう助言している場合なのか。 消費者を守ろうという意識が欠落している。
2017年4月5日号
衆院消費者特 民進党が消費者庁天下り追及
「国賠訴訟されても仕方ない不作為」
元課長補佐の調査記録提出要請
3月 30 日の衆議院消費者問題特別委員会で、 民進党が消費者庁天下り問題を追求した。 大西健介氏は、 元課長補佐の天下りは、 消費者庁が独自に違反認定できたとする内閣府再就職等監視委員会の答弁を引き出した。 2015 年9月に天下りが発覚した立入検査の直後には、 ジャパンライフ社に商品がないことを知っていたのではないかと厳しく追及し、 知っていて行政処分までに1年3カ月もかけたのは不手際があったのではないかと問題視した。 井坂信彦氏は、 預託法で“調査すべき本丸は、 現物の存在”として、 元課長補佐が担当した 2014 年に立入検査をしない合理的理由がどこにあるのかと追及。 当時の調査結果と協議記録を国会に提出することを要請した。 「行政処分が結果的に3年遅れたことで甚大な被害が拡大したということになれば、 国家賠償訴訟をされても仕方がない不作為」 と糾弾した。(相川優子)
「天下り、消費者庁が認定できた」
再就職監視委事務局長が答弁
元課長補佐のメール公表
天下り消費者庁が隠ぺい
同日、 民進党の大西健介氏は消費者庁元課長補佐の天下り問題に関連して、 まず、 消費者庁が元課長補佐の天下りを見逃した責任を問うた。
消費者庁は、 元課長補佐の天下りを防ぐことができず、 発覚後、 5カ月もかけて調査をし、 結局、 違反を認定しなかった。
大西氏は、 元課長補佐と消費者庁総務課人事担当職員とがやり取りしたメールの一部を公表 (詳細3面)。 「いくら本人が否定しても怪しいと気付くはず」 と指摘した。
さらに、 ジャパンライフ社トップに元課長補佐が面会を依頼する社内の決裁文書 (伺い書) を入手しているにもかかわらず、 消費者庁は 「元課長補佐とのやり取りで受けたストレスを解消するために偽造した」 というジャパンライフ社職員の言い訳をうのみにして、 これも見逃していると批判した。 「小学生の言い訳みたいな話」 と揶揄 (やゆ) し、 「メールのやり取りや伺い書だけで、 5カ月もかけずに違反を認定できたのではないか」 と内閣府再就職等監視委員会に質問した。
これに対し、 監視委の塚田治事務局長は、 「消費者庁の調査で天下りを認定することは可能だった」 と答弁した。 消費者庁が意図的に調査を引き延ばし、 天下りを隠ぺいしようとしたことが明らかにされた。
元補佐、「手心加えた」
なぜ、2人しか聴取しない
次は、 元課長補佐が本来、 行政処分にする事案を、 行政指導にとどめたのではないのかと追求した。
元課長補佐が担当した当時と、 再調査をして行政処分したときとで、 何人の消費者から聞き取りをしたかを聞いた。 違反認定の調査期間の多くが重複している。
元課長補佐は 「10 人の消費者に協力を求め、 契約者本人から1人、 家族から1人」 (東出浩一審議官) からしか、 聴取をしていなかった。 2016 年 12 月の行政処分では、 「数十人からきちんとした供述を得て、 6人の供述を違反の証拠として採用した」 (同) との回答を得た。
大西氏は、 再調査時は数十人から意見聴取ができるのに、 なぜ2人からしか聞き取らなかったのかを問題視。 「手心が加えられていると思わざるを得ない」 と糾弾した。
立入検査から行政処分まで、 なぜ1年3カ月かかったのか。 この理由について、 松本消費者相は 「初の預託法違反事案で、 特に慎重な調査が必要だった」 ことを挙げた。
大西氏は、 過去、 特商法の同水準の処分で1年を超えているのはわずか1件のみ。 事案着手から公表まで7カ月というルールからすると、 どう考えても長くかかり過ぎていると批判した。
この1年3カ月の間に、 特商法改正法案の国会審議や河野太郎元消費者相が言い出した徳島移転の試行があり、 これらが影響した懸念もあると追及した。 2回目の処分が 2017 年3月 16 日に行われ、 レンタルされているべき商品がないことが違反認定されたが、 違反認定をした事案は 2015 年5月、 7月、 2016 年1月、 7月で、 1回目の 2016 年 12 月 16 日の処分時に十分違反認定はできたはずだ―との見解を示した。
「レンタルすべき商品がない」
2015年10月に知っていた
「レンタルされているはずの商品がないことを消費者庁は 2015 年 10 月頃には、 気付いていたのではないのか」 -。 大西氏のこの質問は核心部分だ。 2015 年9月の立入検査で、 財務関係書類やデータを持ち帰り、 経理担当者から事情聴取を行っている。 さらに、 10 月下旬には埼玉工場に立入検査をして確認もしているのではないかと追及した。
これに対し、 消費者庁の川口康裕次長は 「立入検査で収集した証拠のみでは、 法違反の認定に至らなかった」 と答弁。 大西氏は、 すかさず 「消費者庁の処分が遅れれば、 被害がどんどん拡大して国家賠償訴訟になると思うのが当然。 内部でそういう検討をしていないのか。 気付いたのはいつなのか」 と再度追及。 東出審議官は 「かなり早い段階から調査の視野には入っていたが、 立証に時間を要した。 2016 年 12 月の時点では証拠が十分固まっていなかった」 などの答弁に終始している。
知っていて処分まで1年3カ月
不手際あったのではないか
これらの答弁に対し、 大西氏は、 「2015 年 10 月ごろには、 ジャパンライフが自転車操業であるということを、 分かっていたのではないか」 と糾弾。 「にもかかわらず、 気づいていて1年3カ月もかかったのであれば、 不手際があったのではないか。 その間に消費者被害が拡大したとすれば重大な問題」 と憤りをあらわにした。
J社レンタル収入5000万円
オーナーへの支払い額5~6億円?
また、 関係者の話として、 「レンタル収入が毎月 5000 万円、 レンタルオーナーへの支払額が5億円~6億円。 毎月少なくとも 20 億円程度の新規契約があり、 想定被害総額が一説には1400 億円」 との数字を明らかにし、 「大変なことになる」 と訴えた。 「そもそもこんな会社に消費者庁取引対策課の人間が天下りしていたこと自体が、 消費者行政の信頼を揺るがす深刻な問題」 とし、 「破たんした場合は国家賠償訴訟になるおそれがある」 と述べた。
同日、 大西氏が明らかにした数字について、 松本消費者相は、 「今回認定した違反行為を構成する事実ではないため、 今は回答できない」 と説明しているが、 この数字が事実か、 いつ把握したのか。 知っていてなぜ、 勧誘目的不明示や概要書面記載不備などの形式違反の認定に1年3カ月もかけたのかが、 今後の追及の焦点になる。
なぜ2014年に立入検査しない
調査の本丸は「現物の存在」
井坂信彦氏は、 「預託法は、 豊田商事や安愚楽牧場のような“現物まがい商法”、 “現物なき詐欺商法”から、 高齢者を守るためにできた」 と冒頭、 こう切り出した。 「調査すべき本丸は、 預託物が存在するかどうか」。 天下りした元課長補佐が担当した 2014 年に、 なぜ立入検査をしなかったのかを追求した。
これに対し、 松本消費者相は 「十分な具体性のあるきちんとした供述をしてくれる消費者を十分に確保することが困難だったこともあり、 法違反の認定が困難だった。 このため9月と 10 月に文書による行政指導を行った」 と答弁した。 しかし、 多くの違反の疑いのある相談が寄せられているにもかかわらず、 元課長補佐が消費者1人、 家族1人からしか聞き取り調査をしておらず、 元課長補佐退職後の再調査では数十人から聞き取りが行われていたことが、 大西氏の質問で明確になっている。
井坂氏は、 調査の本丸を疑ったら、 立入検査をするしかない。 立入検査が必須ではないのかとさらに追及。 2013 年9月に預託法の政令を改正し、 家庭用治療機器を同法の適用対象に追加したのは、 ジャパンライフ社が大きな理由だったのではないかとも指摘した。 「7カ月ルールに照らせば、 元課長補佐が担当して3カ月調査した時点で、 普通だったら立入検査に入るべき事案との見解を、 多くの関係者、 専門家が示している」 と、 再度、 立入検査をしなかった理由をただした。
これに対し、 東出審議官は 「担当者が管理職に報告し、 課長を含めた議論の結果、 書類、 書面の記載不備、 備え置き義務違反について、 行政指導で対処する処理方針が決まった」 と回答。 立入検査をしなかった理由の詳細は、 「今後の調査への支障が懸念される」 として答えず、 一般論として 「立入検査をするに十分な疑いを持って臨むことが重要」 との答弁にとどめた。
詐欺なら、被害最低年287億円
処分3年遅れ、被害拡大か
井坂氏は 「(相談者の) ほとんどが 70 歳以上の高齢者、 平均契約金額が約 1500 万円、 2010 年度以降毎年 150 件前後の相談が相次いでいるような会社に、 立入検査をしない合理的な理由があるのか」 と語気を強め、 ①2014 年に立入検査ではなく指導にとどめた事前調査結果②当時の協議記録―を国会に提出することを求めた。
「短期レンタルオーナー契約という1年限りの契約、 しかも同社が販売している一番安いネックレスのみを調べても 2014 年度 287 億円の契約がある。 これがもし詐欺だったら、 287 億円もの被害が、 まさにのちにジャパンライフに天下りをする課長補佐がいた時期に起きている。 他にも 480 万円のベストや 600 万円のベルトもレンタルされている。 20 年の長期契約もある」 と指摘。
「本来はジャパンライフ社の調査を3カ月やって立入検査や報告徴収をすべきだったにもかかわらず、 しなかったのはあまりにも不自然。 処分まで結果的に3年遅れたことで甚大な被害が拡大したということになれば、 国家賠償訴訟をされても仕方がない不作為ではないか」 と厳しく追求した。
これに対し、 松本消費者相は 「会社そのものが他の業務についてまだ営業している状況もあり、 今後、 どういう方向に歩んでいくのかということを適切に見極めていくことが大事なんだろうと思う。 一生懸命取り組んでいきたい」 と述べた。
最高契約額5億円
平均契約金額2800万円に
全国の消費生活センターなどに寄せられるジャパンライフの相談のうち、 最高契約額が5億円になった。 国民生活センターでは、 個人が特定されるため相談内容は公表できないとしている。
4月3日時点での 2016 年度の相談件数は 153 件。 このうち代金を払った相談は 82 件で、 平均契約金額は 2830 万円に上る。 2014 年度は 1230 万円 (相談 166 件中既払い 71 件)、 2015 年度は 1830 万円 (166 件中既払い 77 件) と年々高額になっている。
2回目の業務停止命令が出された3月 16 日に公表された相談件数は、 2016 年度は 133 件 (2月 28 日末までの登録分)。 データーベースに入力するため、 時差はあるが、 テレビで業務停止命令がほとんど放送されていないこともあり、 相談件数はさほど増えていない。 70 歳代以上の高齢者が8割以上を占め、 4分の3を女性が占めている。
「消費者庁の調査で違反認定できた」
再就職規制監視委 報告書に明記
消費者庁元課長補佐の現職中の求職規制違反を認定した内閣府再就職等監視委員会調査報告書の内容が3月 29 日、 明らかになった。 本紙の情報公開請求に応じたもので、 「消費者庁が調査で得た資料のみで、 違反認定は可能と思われる」 と明記されていた。 元課長補佐が在職中にジャパンライフ社トップに面会を求める伺い書は、 2通あった。 さらに、 元課長補佐のメールの中には、 面会をうかがわせる予定表が含まれていたが、 本人やジャパンライフ職員への聴取に活用していなかったことも明らかになった。 元課長補佐が消費者庁総務課人事担当者に3度メールで相談をしていたが、 報告書は、 3度目のメールは具体的な違反が察知でき調査や指導を行うべきで 「不適切と言わざるを得ない」 と指摘。 行政指導後の対応を1人でさせたり、 電子データで業務資料を持ち出させたりするなど、 管理義務への注意を怠った不作為は 「違反行為を助長する」 としていた。(相川優子)
J社トップ面会伺い書「2通」
本紙 情報公開請求で明らかに
調査報告書は 29 ページ。 一部黒塗りで提供された。 2月8日から3月8日までに元課長補佐をはじめとする消費者庁職員人 20 人、 関係者1人に計 25 回聴取し、 供述や証言を裏付ける 96 点に及ぶメールや関係資料などから違反を認定していた。
消費者庁は5カ月も調査して違反を認定できなかった理由として、 「元課長補佐が在職中に同社トップに面会を求める文書を入手したが、 元課長補佐から受けたストレスを解消するために同社職員が偽造したと供述し、 その可能性が否定できなかった」 と、 民進党に回答していた。
しかし、 報告書からは、 面会を求める伺い書は、 2通あったことが読み取れる。
1通目は 「●月●日付で民間企業との再就職活動が可能になります。 顧問契約をするに当たり・・・下記日程でご面会をお願い致したくお伺い申し上げます」 と、 書かれていたとある。 報告書は以下に続く。 しかし、 その期間に会うのは再就職規制の関係で早すぎると考え、 「会うのは早すぎる」 旨を伝え、 面会する約束を断った。 再度、 別の日に面会を約束する伺い書を提出し、 同日決済を受けている。 「下記日程でご面会をお願い致したくお伺い申し上げます」 として、 1カ月後の面会が決定された。 2通も伺い書を偽造するというのか。
元補佐メールにも面会予定表
消費者庁、聴取に活用せず
さらに、 これに加え、 元課長補佐のメールの中には、 ①ジャパンライフ担当者に私用メールアドレス等を知らせたもの②面会予定を有していたことをうかがわせる予定表―が入っていたが、 元課長補佐やジャパンライフ担当者の聴取にこれらの資料を活用していなかった。
報告書の最後には、 「任命権者調査により得た資料のみによっても求職規制違反を認定することが可能であると思料するが、 さらに、 消費者庁において、 上記メールを精査していたならば、 任命権調査においても求職規制違反の認定に至った可能性が高いことを付言する」 と明記されていた。
元補佐3回メールで相談
人事担当者の対応不適切
また、 元課長補佐は求職活動について、 消費者庁総務課人事担当者に3回もメールで相談していた。 監視委は、 2回目のメールの回答は 「適切とはいえず、 違反が進行していた行為者に対し、 制度を認識不足であった状態で対応していたと指摘せざるを得ない」 と報告。 3回目のメールでは、 「具体的事実の進行を察知し、 求職規制に違反することがないよう調査または指導を行うべきであった」 とし、 「利害関係企業に該当するか判断しなければならず、 その回答としては、 不適切なものであったと言わざるを得ない」 としている。
3月 30 日の衆議院消費者特で、 3回目のメールの一部が公表された。 人事担当者は、 元課長補佐に 「具体的な相手方がある程度見込まれている状況であるであろうと推察しています」 と返信しており、 このときすでに、 違反が進行していることを察知していたことがうかがえる。
顧問職のために資料持ち出し
不正許可申請でDVD書き込み
このほか、 元課長補佐は、 利用目的や使用場所の虚偽の報告をして、 CD、 DVD ドライブへの書き込み許可申請を不正に受け、 業務関連資料データを自宅に持ち帰っていた。 監視委は、 「職務には全く不要で、 離職後、 顧問職遂行に備えた内容というべき」 とも指摘している。
黒塗りで詳細は分からないが、 法令関係などの多くの資料も持ち出しており、 ジャパンライフ顧問としてのアドバイス業務に使うことが目的だったと見るのが相当としていた。
消費者庁元課長補佐が、 ジャパンライフの顧問に就任したことが発覚したのは、 2015 年9月 10 日。 同社への立入調査で判明した。
消費者庁が違反の疑いを内閣府再就職等監視委員会に報告したのは 10 月7日。 すでに1カ月近くが立っている。 任命権者調査(消費者庁の調査)に入り、 「違反は断定できない」 とする調査結果を報告したのは 2016 年2月1日。 5カ月近くをかけていた。
再就職等監視委が委員会調査を決定したのは、 報告から3日後の2月4日。 3月 24 日には違反を認定し公表している。
組織的隠ぺいは明らか
調査引き延ばし、行政処分に影響か
本来なら、 違反の疑いを報告する10 月7日時点で、 違反を認定してもおかしくない事案に見える。 監視委は報告書の中で、 消費者庁に調査手法の助言を行う中で、 「(証拠の)提出を促し続けてきたが、 委員会調査開始決定後にようやく提出されたという状況だった」 と指摘している。 この指摘が、 消費者庁の体質を如実に物語っている。
消費者庁は元課長補佐の天下りを未然に防ぐ機会があったにもかかわらず、 そのチャンスを逃し、 違反発覚後もその事実を組織的に隠ぺいしようとし、 調査を長引かせたことは明らかだ。
天下り調査の引き延ばしが、 ジャパンライフへの対応策検討の遅れにも影響したと考えられ、 行政処分を遅らせ被害を拡大さえていないか、 今後、 さらに検証が求められる。
2017年3月25日号
ジャパンライフに2度目の業務停止命令
約2万個のレンタル商品「存在せず」
消費者庁元課長補佐の天下り先だった 「ジャパンライフ」 (東京都)。 やはり、 消費者に販売してレンタルしているはずの商品の数と、 実際にレンタルされている商品の数が大きく見合っていなかった。 消費者庁は3月 16 日、 割り当てる商品がないにもかかわらず、 その事実を告げずにレンタルオーナー契約を結んだのは預託法に違反するとして、 同社に9カ月の業務停止命令を出した。 昨年 12 月 16 日に出した3カ月の業務停止命令期限ぎりぎりのタイミングで発令され、 業務停止命令期間は合せて1年になる。 2015 年9月の立入調査で、 レンタルオーナーへの支払額とレンタル収入の収支など財務状況はすぐに把握できたはずで、 なぜ、 この時期まで実態が明らかにされなかったのか、 さらに疑念は大きくなるばかりだ。 元課長補佐の天下り問題が、 消費者被害を拡大させた疑念も大きくなった。 徹底した検証が求められる。(相川優子)
天下りで、被害拡大か
立入検査から1年半、遅すぎる
消費者庁によると、 ジャパンライフは、 ネックレスタイプの磁気治療器2万 2441 個を消費者に販売し、 レンタルする目的で預かっていたが、 実際にレンタルされていたのは、 2749 個に過ぎなかった。
その差の1万 9692 個は、 レンタルされておらず、 実際に商品すらなかった。 契約書では、 レンタルされていない商品は工場で保管し、 レンタル料は同社が支払うとしていたが、 工場を立入検査した結果、 工場には 95 個しかなく、 それも販売して預かった商品ではなく、 今後新たに販売するための商品だった。
ジャパンライフは、 磁石がついたベスト、 ベルト、 ネックレスなどの家庭用磁気治療器を、 100 万円から 600 万円で販売して預かるレンタルオーナー商法を行っている。 預かった商品をレンタルして月6%のレンタル料を預けた人に支払う仕組みだ。
今回、 違反が認定されたのは、 これら商品のうち 「ファイブピュアジュエール」 というネックレスのみ。 他の関係資料などから、 商品がない状態が、 2015 年3月末から 2016 年 12 月末まで継続していたことを認定している。
消費者庁は、 預託法と特定商取引法の2つの法律で、 商品が実際にないにもかかわらず、 この事実を故意に告げずに預託契約、 訪問販売、 連鎖販売を行ったとする違反を認定した。
287.7億円の負債額
94.5億円と虚偽記載
もう一つ、 違反が認定されたのは、 2014 年度の短期レンタルオーナー契約 (1年満期でいつでも解約可) 額が約 287 億 7000 万円あったこと。 本来は預かり金として負債額として記載しなければならないが、 全体の負債額が約 94.5億円と虚偽の記載をしていた。
純資産は約 48 億円としていたが、 負債額が虚偽であった場合は、 この数字も当然虚偽ということになる。
このほか、 安愚楽牧場の破たんを受け、 預かっている商品の個数や総額を記載することとされている明細書などでも虚偽記載を認定している。 預かっている商品は、 短期レンタルオーナー契約と長期レンタルオーナー契約を合せて 3710 個と記載していたが、 ネックレスタイプだけで2万 2441 個あり、 虚偽を記載していた。
また、 預託している商品の総額も、 短期レンタルオーナー契約と長期レンタルオーナー契約を合せて約 33 億 6500 万円と記載していたが、 1年契約のものだけで約 287 億 7000 万円あり、 これも虚偽だった。
ジャパンライフのレンタルオーナー契約には、 短期と長期の2種類がある。 短期契約は、 1年契約で、 いつでも解約ができる。 小売価格 100 万円につき毎月 5000 円のレンタル収入が入る仕組みで、 さらに、 満期手当が 100 万円につき1万 2000 円入る。 長期契約は 20 年契約で、 購入額の大きさ、 連鎖のステージによって購入額が割り引かれる。 契約書には、 「中途解約不可。 相続可」 とされている。 商品は消費者が購入しているため、 満期後は商品が戻ることになる。
同日の会見で、 消費者庁取引対策課は、 レンタルオーナーとユーザーの数、 月々のレンタルオーナーへの支払額、 レンタルによる収入額、 月々の新規契約額、 想定被害額など、 同社の事業の本質を問う質問に、 「違反として認定していない数字は、 言う立場にない」 として、 一切答えなかった。 「ジャパンライフは、 レンタルオーナーの数は 7200 人、 契約額は 690 億円、 レンタルユーザーの数は1万 8000 人と説明しているが、 実態かどうかは認定していない」 との説明にとどめた。
消費者庁は同日、 9カ月の業務停止命令と併せて、 預託法に基づき、 監査法人か公認会計士による外部監査を受け、 5月1日にまでに消費者庁長官に報告することを求める措置命令を出した。 預託者に違反認定事実や会計監査結果を書面で通知することなども求めている。 特商法では、 違反の原因分析と再発防止策を報告するよう指示した。
ジャパンライフは、 「事実と違うところがあるため、 処分について速やかに異議申し立ての行政訴訟を提訴する。 貸借対照表について消費者庁は間違った見方をしているので、 公認会計士が正しい資料を提出して抗議をしている。 商品数が足りていないと指摘されている点についても、 訴訟の中で事実関係を明らかにしていく」 と、 コメントしている。
レンタルオーナーとユーザーの数について、 消費者庁の説明内容の真偽を問う質問には、 「今はお答えできかねる」 としている。
相談者の平均契約額約1500万円
最高2億円、8割が高齢者
同日、 消費者庁が公表した相談件数は、 2014 年度 166 件、 2015 年度 166 件、 2016 年度 133 件(2016 年 2 月末登録分)の計 465 件。 4 分の 3 が女性で、 80 歳代 37.6%、 70 歳代 34.8%、 90 歳代 1.9%と、 高齢者が 8 割を占める。
最高契約金額は 2 億円。 平均契約金額は約 1500 万円。 1 億円以上 4 件、 5000 万円以上 1 億円未満 14 件、 2000 万円以上 5000 万円未満 40 件、 500 万円以上 2000 万円未満 103 件と高額な契約が多いのが特徴だ。
国民生活センターによると、 この 10 年、 同社には毎年 100 件近くの相談が寄せられ、 2010 年度以降は 150 件前後で推移してきた。
第2の安愚楽になりかねない
紀藤正樹・全国安愚楽牧場被害対策弁護団団長の話
安愚楽牧場からの定期報告を受け付けず放置した問題で、 消費者庁の審議官と取引対策課長は厳重注意を受けた。 消費者庁が迅速な処分をしなかったために被害を拡大させ、 国家賠償訴訟が提起されている。
にもかかわらず、 取引対策課の元課長補佐が天下りをし、 立入検査後1年半も放置するという今回の事件は、 論外といえる。
そもそも、 預託法ができたのは、 預託契約が消費者問題になりやすいという背景がある。 より慎重に見て、 違反があった場合は迅速に処分しなければならない。 そのことをいまだに分かっていないのか。 この手の預託法違反は犯罪で、 告発を視野に、 迅速に処分しなければならない事案だ。
今回の事件は、 消費者庁の体質をよく表している。 消費者庁は本当の意味で、 消費者の目線に立っていない。 消費者のことを真剣に考えてくれない人が、 職員として入っていることを懸念する。
第2の安愚楽になりかねない。 消費者庁の不祥事の点でも、 被害が拡大している点でも、 共通している。 預託法上の領域で、 処分を甘くして放置すると、 お墨付きを得たように動き、 返って被害が大きくなる特徴がある。 その間に被害は膨れ上がる。 破たんした場合、 国家賠償訴訟になりかねない。
解説
やはり”現物まがい商法”
新たな被害、放置していないか
やはり、 ジャパンライフのレンタルオーナー商法は、 “現物まがい商法”だった。 違反認定は、 ネックレスタイプの磁気治療器のみでしか行われていないが、 レンタルされているべき約 2 万個の商品の現物がないことが明らかにされた。
2015 年9月の立入検査をした時点で、 レンタルオーナーへの支払額とレンタル収入の収支など財務状況はほぼ、 把握できたと考えられる。
「相手方事業者の支配管理下にあるもの、 先方があると言っているものを、 ないと認定するのは難しい」 (消費者庁取引対策課長) という点は、 一定程度理解はできるが、 1年6カ月というのは、 あまりに時間がかかり過ぎだ。
今回の処分で、 違反認定した事例は 2015 年5月、 同年7月、 2016 年1月と7月。 少なくとも1回目の 2016 年 12 月 16 日の処分時には、 十分認定できたはずだ。
「(1回目の処分は) 確実な部分であえて3カ月とし、 追加的に補強すべく最大限努力をして、 何とか最後の日に処分ができた」 (同課長) というような言い訳は通用しない。 最大限努力したのは、 1回目の処分の後ではないのか。
1回目の処分の異常さが指摘され、 元同課課長補佐の天下り問題が明らかにされ、 民進党が追及を続けていなかったら、 この処分が出たかどうかも疑わしい。 天下りした元課長補佐が行った行政指導に帳尻を合わせ、 隠ぺいしようとしていたものを小出しにしたと言われても仕方あるまい。
処分内容も、 軽微な勧誘目的不明示のみで3カ月業務停止命令という前代未聞の前回処分に続き、 今回は重要事項不告知のみで9カ月の業務停止命令 (特商法)。 いくら罰則付きの違反とはいえ、 1種類の違反で9カ月の業務停止もまた前代未聞。 処分平等原則から逸脱している点でも、 場当たり的な対応を物語っている。
消費者庁は、 新たな消費者被害の拡大を防止するという使命より、 自らの保身を優先させたというのか。
安愚楽牧場の国賠訴訟
何を学んだのか
そもそも預託法は、 豊田商事事件を受け、 金を売ったことにして紙切れ1枚を置いていくという現物まがい商法を規制するために、 1986 年に制定された。 1997 年には、 和牛預託商法の被害が多発し 「人が飼育する哺乳類」 を規制対象に追加したにもかかわらず、 2011 年8月には、 安愚楽牧場が破たん。 約7万 3000 人、 約 4200 億円という戦後最大の消費者被害を発生させた。
2009 年1月に農水省が安愚楽牧場の立入検査をし、 定期的に報告をするよう指示していたが、 2009 年9月に創設された消費者庁に預託法が移管され、 2010 年7月に安愚楽牧場側から消費者庁取引対策課長宛てに定期報告の連絡を受けたにもかかわらず、 消費者庁はこれを放置。 被害を拡大させたとして国家賠償訴訟が提起された。
2009 年3月時点での安愚楽牧場への出資者は約4万 8000 人、 出資額は約 2900 億円だったが、 1年半で約 7300 人、 約 4200 億円に膨れ上がっていた。 「農水省が、 ふるさと牧場に業務停止命令を出した 2007 年の段階で、 和牛商法で残り1社になっていた安愚楽牧場にも処分を行っていれば、 その後の 2000 億円以上の被害は生じなかった」。 こう訴えた紀藤正樹・全国安愚楽牧場被害対策弁護団団長の言葉が、 今も耳に残っている。
消費者庁は、 国家賠償訴訟まで提起されながら、 一体何を学んだのか。
安愚楽牧場の破たんを受け、 2013 年の7月と9月に同法の政省令を改正し、 家庭用治療機器も対象にした時点で、 本来はすぐに立入検査を行うべきではなかったのか。
この 10 年、 同社への相談件数は毎年 100 件程度あり、 2010 年度以降は 150 件を超えていた。 「高齢者の相談が表面化しない典型例」 「契約金額があまりに高額で、 この 10 年心配し続けてきた」 「レンタルの実態があるか調査してほしい」 ―。 こんな相談員の声は、 消費者庁には届かなかったというのか。
安愚楽牧場の破たんを受けて改正した政省令も、 その改正内容が甘くて、 いい加減だったことも鮮明になった。 付属明細書に預託商品の個数や総額などの記載を義務付けたものの、 牛であれば、 牧場で牛の頭数を数えればその実態が把握できるが、 工業製品の場合は、 これでは不十分だ。 レンタルオーナーとレンタルユーザーの数、 オーナーへの支払額とレンタル料など、 収支のバランスが取れ、 健全な事業になっているかどうかをだれもが把握できる内容を記載するよう、 再度改正を検討すべきだ。
再度 消費者庁に問う
オーナー支払い、新規契約で賄ってないのか
本紙は、 前号で、 天下りを要求した元課長補佐が担当した同社への指導 (2014 年9月と 10 月) は、 見返り目的で本来行政処分すべき事案を指導で済ませた疑いが濃厚になったと指摘した。 さらに、 2015 年9月の立入検査で天下りが発覚した後、 消費者庁がその事実を組織的に隠ぺいしようとし、 1 回目の処分を遅らせた疑念も大きくなったと書いた。
今回の処分で、 2014 年度の短期レンタルオーナー契約額だけでも 287 億 7000 万円あることも明らかになった。 単純計算すると月々約 24 億円になる。
元課長補佐の天下り問題が、 消費者被害を拡大させた可能性はますます大きくなった。 国会審議で、 その真相の究明を求めたい。
同日の会見で、 レンタルオーナーの数とユーザーの数、 月々のオーナーへの支払額、 レンタル収入、 想定被害額を問う質問に、 消費者庁取引対策課は、 一切答えなかった。 本来、 把握していないはずはなく、 想定被害額を出していないことなど考えられない。 分かっていても答えられないのではないかと、 逆に疑いたくなる。
安愚楽牧場のときのように、 新規契約者を勧誘しなければ、 牛の預託者への配当金をまかなえないような状況にはなっていないのか。 その場合は、 次の被害者のお金でレンタルオーナーへの支払いが行われていることになる。 それが分かっていて処分を遅らせたということになれば、 消費者庁は新たな被害を放置したことになる。
豊田商事事件のときに、 個別の被害救済を優先させ、 甚大な被害を拡大させたという苦い経験もある。 破たんの恐れが明確になっている場合は、 破たんの引き金を引いたと言われようが、 断固として迅速な処分をし、 相応の周知をしなければならない。
今回の行政処分は、 悪質性や被害の規模感が伝わらないあいまいな会見で、 全国紙の扱いも小さく、 テレビはほとんど放送しなかった。 十分な周知が図られたとは言いがたい。
消費者庁に、 今一度問いたい。 新たな被害者のお金でレンタルオーナーへの支払いをしている実態はないのか。 行政処分で破たんしたと消費者庁に矛先が向かないようにしているというのであれば、 事なかれ体質ここに極めりと言わざるを得ない。 1回目の処分後も、 預託取引や訪問販売、 連鎖販売が継続されていると会見で報告していたが、 今なお、 新たな被害を放置しているということはないのか。
2017年2月15日号
消費者庁天下り問題
「行政処分に手心加えてないか」
民進党、消費者部門会議で追及
「天下りの見返りに、 行政処分に手心を加えたのではないのか」 ―。 天下り要求をした消費者庁取引対策課の元課長補佐が、 行政処分された 「ジャパンライフ」 の顧問に就任していたことが発覚した問題を受け、 民進党は2月9日、 消費者・食品安全部門会議 (座長、 相原久美子・民進党ネクスト内閣府特命大臣) を開いた。 出席した国会議員からは、 ①天下り要求が、 元課長補佐が担当した行政指導に影響していないか②組織的な隠ぺいで、 その後の行政処分を遅らせたのではないか―などを追求する質問が相次いだ。 これに対し、 消費者庁は個別事案を理由に、 詳細な回答を避け、 疑念を払しょくできる答弁にはなっていない。 相原座長は 「監督官庁がどういう姿勢で臨むかが問われている。 疑念を払しょくしなければ、 消費者の安全安心は守れない」 と述べ、 部門として提出する質問に再度文書で回答することを要請。 回答を踏まえてさらに同問題を検討する方針を示した。 同社への相談の内容をすべて公表することも求めている。(相川優子)
監督官庁の姿勢問われる
相談内容の公表求める
本紙1月1日号 (2016 年 12 月 28 日発行) で、 消費者庁が昨年末に行政処分した 「ジャパンライフ」 の顧問に、 内閣府再就職等監視委員会が在職中に“天下り要求”をしたと認定した元消費者庁取引対策課課長補佐が就任していたことが分かったと、 報道した。
2015 年9月、 消費者庁がジャパンライフの立入検査をした際に、 元課長補佐が同社の顧問に就任していることが発覚していた。 行政処分が行われたのは、 それから1年3カ月後の 2016 年 12 月 16 日。 特定商取引法で3カ月の一部業務停止命令を出したが、 違反が認定されたのは勧誘目的等不明示のみという異例の内容 (預託法は、 概要書面記載不備、 備え置き書面記載不備で3カ月の一部業務停止命令) だった。 元課長補佐が担当した行政指導の時期を消費者庁は明らかにしないが、 2014 年8月から 12 月の間に行われている (内閣府再就職等監視委員会の公表資料より)。
消費者庁によると、 ジャパンライフは、 磁石を埋め込んだネックレスやベルトなどを 100 万円から 600 万円で販売し、 レンタルすると毎月6%の利益が得られるとするレンタルオーナー契約を、 訪問販売やマルチ商法で勧誘していた。
行政処分案件を
指導にしていないか
同日の部門会議で、 副座長の大西健介衆議院議員は、 「行政処分に手心を加えて指導にするから、 退職したら受け入れろということをやっていたなら大問題」 と指摘した。 「天下り要求をした時期と、 行政処分の時期は重なっていないのか」 「元課長補佐が指導していた時期にも、 違反があったのではないのか」 「本来は、 処分案件があったものを、 行政指導で済ませたのではないのか」 と質問した。
これに対し、 消費者庁取引対策課の佐藤朋哉課長は 「個別事案の具体的内容は詳細に言えないが、 一般論でいうと、 適正な手続きで収集できた証拠に基づいて処分するのが基本」 と回答。 「今回、 2015 年2月、 3月の具体的な事例で法違反が認定できたため、 それに基づいて処分を行った」 と説明した。
「ここは、 核心部分。 一般論では、 疑いが晴れない」 と切り込んだのは、 井坂信彦衆議院議員。 「おねだりと引き換えに、 見逃したと疑うのが当たり前。 そのチェックをしていないのか」 と追及した。 ①元課長補佐はやるべきことをやっていたのか②2014 年8月~12 月までに処分に足る事実はなかったのか③2014 年には、 ジャパンライフは勧誘目的等不明示の違反は一切やっていなかったのか―などを、 さらに厳しく質問した。
佐藤課長は 「いつ調査に着手したかは言えないが、 担当者任せにせず、 上司に報告して組織としてどうするか決定している。 当時、 どのようなことをしていたか、 当然把握しているが、 個別案件で今後に障ることもあるので申し上げられない」 と回答。 「同じ違反事実があったとしても、 どの程度継続的に行われていたかを踏まえて、 処分内容を決定するのが一般的」 と述べるにとどまった。
消費者庁の回答では
「疑念払しょくできない」
井坂氏は 「それでは、 全く疑いが晴れない」 と憤慨。 「上司に報告しなかったのではないかという疑問もある。 違反を見逃したのではないのか」 と述べ、 ①形式的な違反がいつからあったか②どんな違反があったか③なぜ、 処分に至らかなかったか―などについて、 文書で回答することを要請した。
「言えないのでは、 話にならない」 と、 事務局長の中根康浩衆議院議員。 「2015 年に違反を認定していることが、 2014 年にもあったのではないかというのは、 率直な疑問。 現に 2014 年度の相談は 165 件もある。 確認していないのか」 とただした。 佐藤課長は 「一部の形式的な違反は、 それ以前にも認められたが、 それだけで処分するのが妥当か判断した上で、 当時は処分に至らなかったと思っている」 と回答している。
指導時に違反なかったのか
すべての相談内容示せ
矢田稚子参議院議員は 「3年間で、 486 件もの相談がある」 として、 相談の中身をすべて示すことを求めた。 この問題には、 ①天下り要求②消費者庁が本来業務をしたのか③組織ぐるみで隠ぺいしたのではないか―3つの問題があると指摘。 疑いを払しょくするためにもきちんと相談の中身を出すことを要請した。
井坂氏は、 さらに認定した違反が 「概要書面の付属明細書に、 主要株主への貸付金を書いていなかった」 「無料のエステやマッサージに行くと勧誘目的を告げなかった」 など、 形式的な違反にとどまっている点にも、 疑問を投げかけた。 「私が勝手に疑っている違反とは違う。 本丸ではないような気がする」 と指摘し、 「えびの養殖で養殖場がないケースがあったが、 本当にレンタルはされているのか」 と質問。
佐藤課長は 「今回の処分には含まれていない。 個別事案で詳細な説明はできないが、 継続的にウォッチし、 証拠に基づいて認定できれば、 きちっと処分する」 と答えた。
立検から処分まで1年3カ月
組織的に遅らせたのではないか
大西氏は、 立入検査から行政処分までに1年3カ月を要した点にも、 長く時間がかかり過ぎたのではないかと、 疑問を投げかけた。
その理由として、 ①当該職員が顧問を辞めるまで待ったのではないか②特定商取引法の改正に影響することを恐れ、 法改正が終わるまで引き延ばしたのではないか③ジャパンライフは訪問販売を止めているということだが、 業務停止命令を受けても影響が出ない時期まで時間稼ぎをしたのではないか― 3つの懸念があると指摘した。
これに対し、 佐藤課長は 「ケースバイケースで、 さまざまな場合がある。 本件は非常に難しい事案で、 さまざまな観点から調査する必要があった」 と答弁。 大西氏は 「懸念は払しょくできない」 として、 他の事例で、 立入検査から処分まで1年以上かかった事例を示すことを求めた。
2012年の天下り要求
消費者庁、監視委に報告せず
大西氏は、 天下り要求があった事実を、 消費者庁が長期にわたって調査し、 違反ができなかった点に加え、 事前に情報があったにもかかわらず、 未然に防ぐことができなかったことも問題視した。
同日のヒアリングで、 内閣府再就職等監視委員会は、 ①5カ月近くも調査し、 違反が認定できなかった②2012 年にも天下り要求をした情報があったにもかかわらず、 監視委に報告しなかった③ (ジャパンライフの違反認定期間中に) 何度も元職員が消費者庁人事当局に求職規制などについて相談しているにもかかわらず、 十分な対応をせず現職中の違反を未然に防ぐことができなった―3点について問題があったと報告した。 同委の公表資料では、 2014 年 12 月以降 2015 年3月までに、 元職員が3回消費者庁人事当局に相談したとしている。
大西氏は、 ①なぜ5カ月もかかり、 その結論が問題ないということになったのか②職員が求職について何度も相談しているにもかかわらず、 なぜ見逃したのか―などについて質問した。
これに対し、 消費者庁総務課の坂田進課長は 「監視委員会の助言を受けながら調査したが、 強制調査権限がないため供述に虚偽が含まれていた場合に限界があった。 広い範囲の供述を求めたが、 真偽が不明な証言が多々あり、 裏付けに難航を極めた」 と回答。 職員が相談したことについては 「仮定の話ということで、 何度も具体的な話があるのかと質問したが、 具体的な会社名は一切出てこなかった。 突っ込み不足があったと反省している」 と、 答弁している。
2012 年の天下り要求は証拠がなかったのか、 この問題の調査期間中に取引対策課の課長が4人も交替しており、 どのようにかかわったのかなどについても、 文書で回答することを求めた。
相原座長は 「消費者庁が消費者の立場に立ってどう安心安全を確保するかということに対し、 天下りで影響があったのではないかという疑念が出ているのが一番の問題。 疑念を払しょくしなければ、 特定商取引法を改正しても、 消費者の安全安心は守られない」 と述べ、 これから部門として出す質問に対し誠実に回答し、 疑念を払しょくすることを求めた。
中根事務局長は、 消費者庁、 経産省、 監視委に部門から出す質問に文書で回答することを要請。 回答を踏まえて、 必要があれば部門会議で議論する方針を示した。
消費者庁天下り要求問題
本来業務への影響、検証を要請
衆院予算委で民進党の井坂信彦氏
2月7日、 衆議院予算委員会の天下り問題集中審議で、 民進党の井坂信彦氏は、 消費者庁の天下り要求問題を取り上げた。 違反が認定されても退職後では懲戒処分の対象にならないとして、 刑事罰を科すことを提起。 法執行担当課の元課長補佐が利害関係企業に就職したことで 「消費者庁の本来業務がねじ曲げられることがなかったか」、 しっかり検証することを求めた。
元課長補佐級職員
消費者庁が再就職先に違反伝達
井坂氏は、 消費者庁は小さい役所であるにもかかわらず、 すでに2件も違法な天下りを認定されていることを問題視。 「違法が認定されても、 退職後で懲戒処分の対象にならない。 結果的におとがめなしになったのではないか」 と質問した。
これに対し、 松本純消費者担当相は 「違反認定時、 違反者はすでに国家公務員を退職していたことから処分はできなかった」 と報告。 元課長補佐級の違反者については、 「違反の認定を受け、 違反者と再就職先に違反事実を伝達した結果、 違反者は再就職先を辞任したと聞いている」 と説明した。 違反が公表されても退職しない元職員に対し、 消費者庁が再就職先に働きかけ、 退職を確認したことを明らかにした。
井坂氏は、 「違法な天下りに刑事罰を科す」 ことを提起。 これについて、 山本幸三国家公務員制度担当相は 「職務上の不正な行為をする等の見返りとして、 他の職員、 自身の再就職を要求した職員については、 すでに刑事罰がある」 とし、 「刑事罰の強化については、 慎重な検討が必要」 との見解を示した。
井坂氏は、 「天下り問題の本質は、 天下り先の企業に対する規制や取り締まりが甘くなる、 優遇されることがあるのが最大の問題」 とし、 「本来業務がねじ曲げられることがなかったのか、 しっかり検証する」 ことを求めた。
これに対し、 山本国家公務員制度担当相は 「全府省庁を徹底的に調査して、 どうしたら再発防止できるか、 しっかり考える」 と答弁。 安倍晋三首相は 「全省庁で徹底的に調査をし、 その検証を行い、 今後やるべきことがあればすべてやるという考え方で臨む」 と述べた。
解説
隠ぺいせず、誠実に検証せよ
消費者庁天下り要求問題
消費者被害の拡大に直結
消費者被害の拡大を防止するために悪質事業者の取り締まりを行う課の元課長補佐が、 現職中に、 その利害関係企業に天下りを要求し、 再就職していた。 あまりに悪質で、 監督官庁として、 消費者庁の根幹にかかわるゆゆしき事態だ。
万が一、 行政処分の甘さや遅れにつながったとしたら、 消費者被害の拡大に直結する。 その疑念がないのか、 明確に払しょくする必要がある。
民進党国会議員の要請通り、 元職員が行政指導を行った時期、 それ以前にどんな違反事例があったのか。 相談概要をそのまま提供すべきだ。 その相談事例のうち、 何件消費者の聞き取り調査を行い、 どのように判断をしていたのか。 この時点で処分すべき案件だったかどうかをまずは、 検証する必要がある。
消費者庁は、 預託法の政令改正で家庭用治療機器が対象になって以後の3年間の相談件数しか公表していないが、 ジャパンライフについてはこの 10 年間毎年 100 件近くの相談が寄せられ、 2010 年以降は年間 130 件を超えている。 特商法の訪問販売やマルチ取引で処分する場合は、 これらもすべて対象になるはずだ。
行政処分すべき案件を
行政指導で済ませていないか
昨年末の行政処分で、 無料エステやマッサージに行くなどと勧誘目的を告げなかったことだけで、 なぜ、 特商法で業務停止命令3カ月の処分が出せたのかは疑問でしかないが、 であれば、 勧誘目的等不明示の相談がいつから寄せられていたかも当然明確にすべきだ。
消費者庁は、 2015 年 12 月に勧誘目的等不明示と契約書面記載不備で 「東洋防災設備」 こと高田良一に対し、 業務停止命令3カ月を出した事例を、 前例に挙げたが、 説明になっていない。 この案件は、 勧誘目的等不明示に加え、 特商法上の契約書面の記載不備 (契約書面に販売価格、 数量記載せず) の2つの違反を認定している。 特商法上で勧誘目的不明示のみの1種類の違反で業務停止命令が出た前例はない。
指導、 処分内容が適切だったかどうかを検証する必要がある。
行政処分の時期
組織ぐるみで遅らせていないか
次に検証すべきは、 2016 年の行政処分の時期が遅れたのではないかという点だ。 特商法改正への国会審議への影響を恐れ、 これらの問題を組織ぐるみで隠ぺいし、 行政処分を遅らせたのではないかという疑念が出ている。
2月7日の予算委員会で、 松本純消費者担当相が、 違反の認定公表後に、 「違反者と再就職先に違反事実を伝達した結果、 違反者が再就職先を辞任した」 ことを明らかにした。 再就職等監視委が違反公表したのは、 2016 年3月 24 日。 公表後も元消費者庁職員は顧問を退職しておらず、 退職したのは同年5月 10 日付であることが取材で判明している。 この間、 行政処分を避けたのではないかという指摘も出ている。
2015 年9月のジャパンライフの立入検査から行政処分までに、 なぜ、 1年3カ月もかかったのか。 天下り要求自体の調査に5カ月近くもかけ、 違反を認定していない。 消費者庁の調査で十分違反を認定できたと再就職等監視委は見ている。 同社会社案内には、 元課長補佐が写真、 経歴付きで関連法律担当顧問として紹介されている。 これを見て信用した消費者が少なくないことは容易に想像できる。 恣意的に行政処分のための調査を遅らせることがなかったのか、 検証する必要がある。
恣意的に調査を長期化させ、 不作為 (何もしなかったことで発生した罪) があったとすれば、 甚大な消費者被害につながった場合、 国家賠償訴訟にもなりかねない。
自浄作用働かず
なぜ、防げなかったのか
2012 年にも同様の天下り要求を、 別の会社に行っていたことを、 再就職等監視委は公表している。 明確な証拠があったにもかかわらず、 再就職等監視委に報告していなかった。 ジャパンライフに求職要求した後も、 元職員が何度も求職規制などについて消費者庁総務課人事担当に相談 (再就職等監視委公表資料では3回) しているにもかかわらず、 未然に防ぐことができなかった。 人事担当が、 組織的に隠ぺいしたのではないのか。 なぜ、 自浄作用が働かなかったのかも検証する必要がある。
隠ぺい体質と事なかれ対応
事態悪化させていないか
さらに、 消費者庁の特商法の行政処分件数自体が 2016 年は処分事業者4事業者 (件数は 16 件、 ジャパンライフの行政処分件数は同法6件、 預託法2件とカウント) と激減した。 そのうちの3事業者が訴訟等を提起している (ジャパンライフは訴訟予定)。 異例の事態だ。
消費者庁の 「隠ぺい体質」 と 「事なかれの対応」 が、 さらに事態を悪化させているように見える。
ジャパンライフの調査開始から今回の処分まで課長が4人も交代している。 立入検査から処分まで1年3カ月を要したこと、 その処分も極めて疑問のある内容であることは、 迅速な処分で消費者被害拡大を防ぐことを使命とする執行担当課の長としての対応に、 疑問符が付く。
経産省人事にも問題
消費者庁の姿勢問われる
経済産業省も訪問販売法時代からの法所管省庁として、 然るべき者を出向させる責任があるのではないか。 消費者庁取引対策課の課長や多くの職員の人事権が、 いまだに経済産業省にある。
徳島移転の 「試行」 直前に課長を交代させるやり方にも疑問が残る。 執行経験のない課長が十分な引き継ぎも行われないまま、 着任早々、 徳島県に1カ月も勤務した。 極秘事項はテレビ会議では扱えず、 執行の遅れに徳島での試行が影響したことも否めまい。
「特商法改正で訪問販売を事前に断った人への勧誘規制に精力的に取り組んだ課長が、 突然異動させられたころから、 風通しが悪くなり、 歯車が狂い始めた。 士気も下がった」 と話す職員は少なくない。 「本来処分すべきものが、 指導や打ち切りになっている。 質が低下してきている」 という悲鳴に近い声も聞こえてくる。
本年 12 月に施行される改正特商法は、 事前規制は盛り込まれず、 罰則強化など法執行の強化で消費者被害を防ぐ内容になった。 執行体制自体がこれほどぜい弱になったのでは、 消費者被害を防止することはできまい。
「天網恢恢疎にして
漏らさず」であれ
本来は消費者庁自らが、 これらの疑念を誠実に検証し、 検証結果を公表して疑念を払拭すべきだが、 自浄作用が働かず、 あいまいな答弁で逃れようとする消費者庁の姿勢から、 それは困難に見える。 第三者がこの問題を検証し、 何が問題かを洗い出し、 具体的な改善につなげていかなければならない。
「天網恢恢 (かいかい) 疎にして漏らさず」 (天の張る網は一見目が粗いようだが、 悪人を逃すことはない)。 消費者庁の法執行はこうあってほしいと切に願う。(相川優子)
2017年1月1日号
ジャパンライフの顧問に
「天下り要求」した消費者庁元課長補佐
12 月 16 日に消費者庁が3カ月間の一部業務停止命令を出した 「ジャパンライフ」 の顧問に、 内閣府再就職等監視委員会が在職中に“天下り要求”をしたと認定した消費者庁取引対策課の元課長補佐が就任していたことが分かった。 2015 年9月の立入調査でこの問題が発覚していた。 消費者庁は天下り要求の調査に5カ月を要しており、 行政処分が行われたのは1年3カ月後。 しかも、 特商法の勧誘目的不明示と預託法の概要書面交付義務違反等で、 業務停止命令が出される異例の内容だった。 事業者側は訴訟を提起するとしているが、 調査の長期化、 違反事実の検証に、 この問題は影響していないのか。 元課長補佐が担当したとされる 2014 年の行政指導の時期、 内容を含め、 消費者庁によるこれら同社への一連の対応が適切だったのか検証を求めたい。(相川優子)
立入検査から処分まで1年3カ月
行政指導の時期、内容含め検証を
再就職監視委が「天下り要求」認定
消費者庁5カ月調査し認定できず
ジャパンライフ (東京都千代田区) の 2016 年の会社案内には、 関連法律担当顧問 (元経済産業事務官) として、 消費者庁取引対策課元課長補佐の写真が大きく掲載されている。 経済産業省から出向し 2009 年から、 消費者庁で特商法や預託法などの法執行を担当。 2015 年度から定年退職再任用で経済産業省に戻った後、 同年7月 10 日から同社顧問として再就職していた。
内閣府再就職等監視委員会が 2016 年3月 24 日、 国家公務員法の再就職等規制違反 (在職中の利害関係企業への求職) に当たるとして公表。 違反事実として、 ①2014 年8月から同社への接触が始まり、 単独での対応が頻発。 何度も 「定年退職」 「最後の仕事」 と告げる②同社からの再就職の誘いを固辞しなかった③同年 12 月下旬、 行政指導中に利用していた資料等を自宅に持ち帰る―などを挙げ、 違反と認定している。
違反の認定公表後も5月ごろまで同社で顧問を続けていたと見られる。 ジャパンライフはこの件の取材に対し、 「昨年 (2015 年) 辞めているので、 当社から答えることはできない」 と回答し、 退職した時期も明らかにしない。 なぜ、 2016 年の会社案内に掲載されているのか疑問は残ったままだ。
監視委、庁の対応に「遺憾」
厳正・迅速な調査求める
2015 年9月、 消費者庁が行った同社への立入検査で、 この問題が発覚した。
消費者庁は 2015 年 10 月7日、 国家公務員法求職規制違反の疑いがあることを同委に報告。 調査を開始し 2016 年2月1日、 違反が断定できないとする調査結果を提出していた。 同委は、 「報告までに5カ月近くを要し、 しかも違反を認定できなかったことは遺憾」 とし、 今後は、 厳正な調査を行い、 迅速に調査結果をまとめることを求めた経緯がある。
2014年の行政指導
その後の違反認定適切なのか
同委の公表資料から、 元消費者庁取引対策課長補佐が同社の行政指導を担当したのは、 2014 年8月~12 月の間と見られる。 全国の消費生活センターなどに寄せられる同社への相談件数は毎年高水準で推移し、 2006 年以降 1395 件 (12 月 20 日登録分) の相談が寄せられている。 2010 年度は 137 件、 2011 年度 146 件、 2012 年度 165 件、 2013 年度 156 件、 2014 年度 165 件、 2015 年度 165 件の相談がある。
預託法は 2013 年9月に政令が改正され、 同法の規制対象にジャパンライフが扱う家庭用治療機器が追加されている。 元課長補佐が担当した行政指導は、 本当に指導でよかったのか。 時期や内容の検証を求めたい。
さらに、 このことで同社への立入検査が遅れることはなかったのか。 立入検査後、 天下り要求の調査に消費者庁は5カ月近くを要しており、 これへの対応で同社への対応が遅れたことは想像に難くない。
勧誘目的不明示で
3カ月の業務停止命令
12 月 16 日に消費者庁が行った行政処分では、 3カ月の一部業務停止命令を出しているが、 違反事実の認定は、 特商法では 「無料でエステやマッサージをする」 などと訪問して、 勧誘目的を明らかにせずに勧誘した勧誘目的不明示のみ。 預託法でも書面交付義務違反、 書類の据え置き義務違反にとどまっている。
しかも、 違反原因を認定した相談事例は、 2015 年1月から3月。 2年近くも前の事例と古い。
これだけの違反認定であれば、 特商法は行政指導、 預託法は指示処分 (措置命令) が適当と考えられる。 過去に、 直罰規定がない勧誘目的不明示のみで特商法の業務停止命令が出されたことはない。 消費者庁は明らかにしないが、 過去に行政指導が行われて同じ違反が繰り返されていたのであれば、 このような処分もあり得ると考えられる。
レンタルオーナー契約を勧誘
「100万円につき毎月5000円」
消費者庁によると、 ジャパンライフは、 磁石を埋め込んだネックレスやベルトなどを 100 万円から 600 万円で販売し、 レンタルすると月々6%の利益が得られるとするレンタルオーナー契約を訪問販売やマルチ商法で勧誘している。
オーナー契約には、 1年契約で自動継続ができる短期オーナー契約と、 20年契約 (相続可) の長期オーナー契約の2種類がある。 同社のパンフレットで、 短期オーナー契約は、 「磁気治療器小売価格 100 万円につき毎月 5000 円」 などと宣伝。 長期オーナー契約は、 「中途解約はできない」 とし、 金額に応じて割引があることをうたっている。 マルチ取引で資格が上がると割引率が高くなる仕組みも導入されている。
相談の8割が70歳以上
平均契約額約1700万円
消費者庁が公表した相談件数は、 2014 年以降 16 年 11 月 10 月までの 401 件。 契約者の年齢は 80 歳代 37%、 70 歳代 36%、 60 歳代9%、 90 歳代2%と高齢者が大半を占める。 平均契約金額は約 1700 万円、 最高額は約2億円と高額だ。
ジャパンライフは、 今回の処分について 「異議申し立てをする。 訴訟を行う予定」 とコメントしている。
同社の山口隆祥会長は 1975 年、 マルチ規制を導入する訪問販売法案 (現特商法) を審議した国会で、 元祖三大マルチとして知られるジェッカーチェーン社長として、 参考人意見陳述した人物でもある。
「高齢者の相談、表面化しにくい」
「何の契約か分かっていない」
相談現場からは、 「1000 万円を超える契約が当たり前で、 10 年前から破たんしたら大変なことになると言われている。 高齢者がだまされていると思っていないため、 家族が気付かない限り表面化しない」 「高齢者の相談が表面化しにくい典型例」 「家族があまりに高額な契約や客観的な状況からおかしいのではと心配しているケースが多いが、 高齢者が信頼しきっていてセンターが入るのが難しい」 「本人が何の契約をしているかよく分かっていない。 投資だと思っている」 「相談員でも、 契約書を見なければ、 販売なのかオーナー契約なのか、 レンタル利用契約なのかよく分からない」 「センターがあっせんに入った場合は解約に応じている」 「行政処分の違反認定が勧誘目的不明示なのは疑問」 などの声が聞かれた。
解約時の違約金などで訴訟になっているケースもある。 インターネット上でも 「レンタル商品に 20 年の寿命があると思えず、 ボロボロにならないか」 「オーナーとユーザーのバランスが取れているのか」 「オーバートークに問題はないのか」 などの書き込みが見られる。
ある相談員は、 「預託商法は破たんしなければ被害が表面化しない。 高齢者の契約金額があまりに大きい。 高齢者が老後の資金を失った場合は、 健康被害に直結することが少なくない」 と話し、 「高齢者が契約している番号の商品がきちんとレンタルされているのか。 消費者庁は消費者に代わって実態を把握してほしい」 と訴えていた。
「オーナー数千人、
契約額数百億円」
預託法は法目的に 「預託者の利益の保護」 を掲げている。 レンタルオーナーとレンタルユーザーのバランスは取れているのかとの質問に、 消費者庁の佐藤朋哉取引対策課長は 「オーナー契約者数が数千人、 契約額は数百億円。 後は事業者に聞いてほしい」 としか答えていない。 事業者側は 「訴訟を予定しているので、 一切答えられない」 と回答している。
今回の行政処分の違反認定が、 事業者の主張通り問題があるのか、 適切な違反認定なのか、 特異な経緯から恣意的な事実認定をしているのか、 法廷での実態解明を待ちたい。 ただし、 消費者庁は相談現場からの声を真摯に受け止め、 同社の経営が健全で、 継続性があるか判断を示すべきではないのか。
消費者庁の行政処分激減
2016年の4件中2件で訴訟
今回の行政処分は、 特定商取引法で6件 (訪問販売、 レンタルユーザーの役務提供契約、 連鎖販売取引でそれぞれ業務停止命令と指示)、 預託法の業務停止命令と指示を合わせると8件とカウントされる。
このため件数ではなく、 特商法で処分された事業者数を比較すると、 2016 年度は4事業者と激減している (表参照)。
さらに、 執行件数が激減しているにもかかわらず、 処分した4事業者のうち、 2事業者は訴訟を提起 (1件は訴訟予定) し、 1事業者が行政不服審査法に基づく再審査請求を行っている。
すでに提訴されている1件は、 事業者による執行停止申し立ての主張が認められ、 行政処分の効力は停止されている。 異例の事態と言える。 どこに問題があるのかをきちんと検証し、 執行体制を立て直す必要があるのではないのか。
加えて、 消費者庁は、 処分する必要性や事案の特性についても説明しなくなった。
処分内容の公表と併せて、 業務停止命令を出した会社の社員が同じ手口で悪質商法を繰り返す事実があることや、 マルチ商法で利益を上げている会員の割合なども公表し説明していた時期もあったが、 なぜ説明しなくなったのか。
処分の公表に際し、 何が問題なのかをしっかりと伝え、 報道などで周知されることは、 消費者のみではなく事業者にとっても意味があるのではないのか。
本年 12 月2日までには、 改正特商法が施行されるが、 改正法は罰則の強化など執行を強化することで悪質商法の被害を防ぐことを重視した内容になっている。 改正前に執行力が弱体化してしまったのでは、 本末転倒だ。
法執行は制裁のみではなく、 被害の拡大防止に大きな役割を果たす。 処分が甘くなる、 あるいは処分の時期が遅れることで、 被害が拡大することなどあってはならない。 将来の被害を拡大させない、 天下り問題を払しょくする消費者庁取引対策課の本年の取り組みに期待したい。